この野生ランは根も葉もありませんから植物でありながら光合成も必要ありません。
従って暗室で栽培出来ます。この植物は吾々ご同輩の間では競い合って研究を重
ねております。この仲間には十数種類あります。続々と新種が発見されています。
巷では腐生ラン(菌従属栄養性ラン)と云われています。
腐生ラン培養ボックス全体図
昨年も多数咲いた。糸状のものは根状器官だが、間もなく消えてなくなります。これは野生に於いても
花の咲くころ萎えて終うのでヤツシロランの生態系の現われだ。太い糸状のものは昨年咲いた花柄の
名残である。今回も次から次と多数咲きあがる。この腐生ランは菌(きのこ)に寄生して栄養を得ている
ので菌が消滅すればこの腐生ランも消滅する運命共同体の様な生態系だ、なのでこの菌を如何に養
うかが課題となる。菌は眼に見えないが時たまきのこが生えてくるのでこのきのこが共生菌なのかと心
が躍る。何故ならこの菌は木材腐朽菌と云われ椎茸の様に栽培可能な菌なのだ、やがてこのきのこを
椎茸の様に生やすことが出来れば"「ほだ木を造ってラン栽培」の合言葉が出来上がる。難関の腐生ラ
ンの栽培が可能になれば全てのラン栽培の於ける究極の極意を極めたと云われてきた。
腐生ランの栽培を語るのもおこがましいが腐生ランの種を直播して花を咲かせ種子を確保する事が出
来ないか吾ら同志が研究を重ね、此れが実現して今日に至っている。しかし残念な事にこんなラン科を
栽培して花を咲かせても観賞価値は全く無い。なので誰もやらない。たまに研究者が論文に乗せる程度
である。
何を言いたいかと申せば
1.一般のラン科植物は種子を直播してもほぼ発芽はしない。無菌培養で発芽をさせハイテクを駆使しても
花を見るまでには数年かかる。カトレヤ、コチョウラン、シンビジューム等々
1.腐生ランは種子を直播して一年足らずで開花、種子確保迄出来る、季節を問わず開花する。無菌培養
は不可(二者共生菌の場合)、二者共生とは木材腐朽菌。
以上の事を比較すると
つまり世相論の逆転劇と云う事だ。世相論では腐生ランには手を出すべきではないと云われて来た
現在も知識人、研究者間でも常識の様だ。一年足らずで生態系の一サイクルを成し遂げるラン科植
物など聞いたことない。其れが野菜の種蒔きの様に直播きすれば最速で一週間、20日前後で発芽す
る事が分かった。成熟した塊茎であれば一サイクル4ケ月で開花することも実証した。なので年間3回の
開花も達成した。